3DCG制作を始めようと思っても、「どんなスペックのパソコンを選べばいいのか分からない」と悩んだことはありませんか。
CPUやGPU、メモリなど、数多くあるパーツのなかで、どの部分に重点を置くべきか迷うのは当然です。
適切な3DCG向けスペックを選ばないと、制作途中で動作が重くなったり、作業効率が大きく下がってしまいます。
この記事では、3DCG制作に最適なパソコンのスペック基準から、用途別の選び方までをわかりやすく解説します。
理想の3DCG環境を実現するためのヒントを、さっそくチェックしていきましょう。
3DCG制作に必要なパソコンスペックの具体的な基準

3DCG制作を快適に行うには、用途に合ったパソコンスペックが重要です。
PCの構成要素ごとに目安や、どの作業にどんなスペックが必要かを理解して選びましょう。
CPUの推奨スペック
3DCG制作におけるCPUは、作業全体の処理速度に大きく影響します。
特にレンダリングや複雑なシーンの編集では、高クロックかつコア数の多いCPUが求められます。
目安としては、Intel Core i7・i9やAMD Ryzen 7・9の第10世代以降がおすすめです。
コア数は最低でも6コア、できれば8コア以上あると快適に作業できます。
CPUのグレードアップで体感速度が向上しやすいため、予算が許す限り良いものを選ぶと将来的にも安心です。
GPU(グラフィックスボード)の重要性と選び方
3DCGの描画やリアルタイムプレビュー、GPUレンダリングには高性能なグラフィックスボードが必須です。
ゲーム用とプロ向けで大きく分かれますが、多くの3DCGソフトはNVIDIA GeForceシリーズが安定して使用できます。
- 最低ライン:NVIDIA GeForce RTX 3060以上
- 推奨:RTX 3070~4090クラス、VRAMは8GB以上
- 予算に余裕があればプロ向けQuadroやRTX Aシリーズも選択肢
VRAM容量はCGで扱うデータ量に直結します。
複雑なシーンや4Kテクスチャを多用する場合は12GB以上欲しい場合もあります。
メモリ容量の目安
3DCG制作ではメモリ不足が動作不良や速度低下の原因となります。
作業用データが多くなるほどメモリ容量に余裕が必要です。
用途 | 推奨メモリ容量 |
---|---|
初級3DCG(小規模モデル作成) | 16GB |
標準的なモデリング・レンダリング | 32GB |
アニメーションや高解像度レンダリング、複雑なプロジェクト | 64GB以上 |
後から増設できる設計かもチェックしましょう。
ストレージの種類と容量
データの保存や読み込み速度はストレージの種類で大きく変わります。
近年はSSD(特にNVMe)が圧倒的におすすめです。
作業用ドライブとして最低500GB~1TB程度のSSDが理想です。
大容量データの保管やバックアップ用にHDDを組み合わせる方法も有効です。
できればプロジェクトファイル用、システム用と分けて使うと効率的です。
ディスプレイ解像度・サイズの選び方
細かなモデリングや、色味の確認にはディスプレイ選びも重要です。
作業領域に余裕を持たせたいなら27インチ前後、解像度はWQHD(2560×1440)や4K(3840×2160)が適しています。
色再現性の高いIPSパネルや、できればsRGB 100%カバーの製品がおすすめです。
デュアルディスプレイ環境を作ると、作業効率がさらに向上します。
冷却性能と安定稼働のポイント
3DCG制作中はパソコンへの負荷が高くなりやすく、冷却性能も大切です。
高性能CPUやGPUを搭載する場合は、大型のCPUクーラーや液冷システムの導入を検討しましょう。
ケース内のエアフローも重要で、十分な吸排気ファンが備わっているか確認してください。
パーツの温度管理ソフトを入れて、負荷時の温度を定期的にチェックすると安心です。
適切な冷却によって、パーツの寿命や安定稼働を保てます。
作業内容別(モデリング・レンダリング・アニメーション)のスペック目安
3DCG制作と一口に言っても工程によってスペックの重点が変わります。
作業内容 | CPU | GPU | メモリ | ストレージ |
---|---|---|---|---|
モデリング | 6コア以上、3.0GHz~ | RTX 3060 以上 | 16~32GB | 500GB SSD |
レンダリング | 8コア以上、3.5GHz~ | RTX 3070 以上、VRAM 8GB~ | 32~64GB | 1TB SSD |
アニメーション | 6~8コア、できればマルチコア対応 | RTX 3060~4080、VRAM多め | 32GB 以上 | 1TB SSD+HDD |
モデリングはバランス型、レンダリングはCPU・GPU・メモリ重視、アニメーションはメモリとストレージも重要になる傾向です。
担当する工程が明確なら、重点的にスペックを強化しましょう。
3DCG制作向けスペックが求められる理由

3DCG制作では、高度な計算処理や大量のデータを扱うため、パソコンや作業環境に高いスペックが求められます。
作業効率や完成品質にも直接影響するため、3DCG用に特化したスペックを選ぶことが重要です。
3DCG制作における処理負荷の特徴
3DCG制作では、大量のポリゴンや複雑なマテリアル、詳細なライティング情報をリアルタイムで計算する必要があります。
一つ一つの作業がPCのCPUやGPUに大きな負荷をかけるため、性能不足だと動作が遅くなったり、ソフトがフリーズしたりする原因となります。
また、プロジェクトが大規模化するほどメモリやストレージへの要求も増すため、3DCGは一般的な作業よりもワンランク上のスペックが求められます。
- CPU: シーン全体の管理や物理演算に影響
- GPU: モデリングや描画、レンダリング速度に直結
- メモリ(RAM): 大規模データの扱いや快適なマルチタスクに不可欠
- ストレージ(SSD): 大容量データの高速な読み書きで作業効率アップ
3DCGソフトごとの要求スペックの違い
3DCGソフトウェアによって、必要とされるPCスペックには違いがあります。
例えば、モデリングに特化したソフトと高品質なレンダリングを重視したソフトでは、重視されるパーツが異なる場合があります。
代表的な3DCGソフトのスペック要求の比較を表にまとめました。
ソフト名 | 推奨CPU | 推奨GPU | 推奨メモリ |
---|---|---|---|
Blender | 8コア以上 | RTX 3060以上 | 16GB以上 |
Maya | 6コア以上 | RTX A4000以上 | 32GB以上 |
Cinema 4D | 4コア以上 | RTX 2060以上 | 16GB以上 |
自身が使うソフトや用途にあわせたスペック選びが、快適な3DCG制作につながります。
リアルタイム処理とレンダリング処理の違い
3DCG制作では、作業中の表示用に使うリアルタイム処理と、最終出力を目的としたレンダリング処理の二種類があります。
リアルタイム処理は主に、動きや編集の際のプレビューをなめらかに行うために必要です。
ここでは主にGPUの性能が問われ、ゲーミングPCのような高性能グラフィックカードが強みを発揮します。
一方、レンダリング処理はシーンのすべての要素を精密に計算して画像や映像として出力するために行われます。
この際には、CPUやメモリも大きく関与し、レンダリングエンジンによってはGPUレンダリングかCPUレンダリングかで負荷分散が変わります。
用途や工程ごとに必要なスペックが変わるため、自分の制作スタイルに合ったバランスの良いパソコン構成を選ぶことが大切です。
ノートPCとデスクトップPCのスペック比較

3DCG制作においてはパソコンのスペックが作品の制作効率や表現力に大きく影響します。
特にノートパソコンとデスクトップパソコンでは、それぞれ特徴と強みが異なるため、自分の用途に合ったモデルを選ぶことが大切です。
ここでは、両者のスペックや拡張性、選び方のポイントについて見ていきましょう。
ノートパソコンのスペック傾向
ノートパソコンは持ち運びに優れており、場所を選ばず作業ができるのが最大の特長です。
最新モデルのノートPCでも、3DCG向きの高性能CPUや専用GPUを搭載したものがありますが、デスクトップPCに比べると放熱や電力の制限からややスペックが抑えられる傾向があります。
さらにメモリの最大搭載量やストレージ容量にも上限があるため、大規模な3DCGプロジェクトには注意が必要です。
バッテリー駆動ができるという点は魅力的ですが、3DCG作業のような高負荷状態だと電源につないで使用することがほとんどです。
また、多くのノートPCではパーツの交換や増設が難しいため、購入時に必要なスペックを備えたモデルを選ぶことが重要です。
デスクトップパソコンの拡張性と強み
デスクトップパソコンは本体サイズに余裕があるため、パーツの拡張性が非常に高いです。
グラフィックボードの性能やメモリ容量、ストレージなどを自由に選択・増設できるので、3DCG向けに自分仕様のマシンを組み上げることも可能です。
また、冷却性能も高く、ハイパフォーマンスなパーツを長時間フル稼働させても安定して動作します。
オフィスや自宅など、据え置きで作業する場合はデスクトップPCのスペックの高さやコストパフォーマンスの良さが大きなメリットとなります。
項目 | ノートPC | デスクトップPC |
---|---|---|
CPU性能 | 高性能モデルもあるが制限あり | ハイエンドパーツも選択可能 |
GPU | モバイル用が中心 | 高性能な専用グラフィックボード搭載可 |
メモリ増設 | 制限が多い | 大容量への増設が容易 |
持ち運び | 〇 | × |
用途別でおすすめの選び方
3DCG制作の用途によって、最適なパソコンの種類やスペックも異なります。
- 外出先や会議、セミナーでも作業したい人は、GPU搭載ノートパソコンがおすすめです。
- 大規模な3DCG制作やレンダリング作業が多い場合は、ハイエンドなデスクトップPCが断然有利です。
- 学生や初心者で予算を抑えたい場合は、用途に見合ったスペックのバランス型ノートパソコンも検討できます。
- 今後拡張や長期的な運用を考えるなら、パーツ交換が容易なデスクトップPCを選びましょう。
自分がどのような3DCG作業をメインとするのか、将来どこまで拡張したいのかを考慮することで、より満足できるパソコン選びができます。
主要3DCGソフト別で見る推奨スペック

3DCG制作で利用されるソフトウェアは、それぞれに最適なハードウェアスペックがあります。
自分が使用するソフトに合わせてPC環境を整えることで、作業効率も大きく向上します。
ここでは代表的な3DCGソフトごとに、推奨されるスペックの目安について紹介します。
Blenderに適したスペック
Blenderはオープンソースかつ高機能な3DCGソフトですが、最新バージョンでは高いスペックが求められる場合もあります。
ミドルレンジ以上のCPUとグラフィックボードを搭載したPCが推奨されています。
- CPU:Intel Core i5〜i7、Ryzen 5〜7クラス以上
- メモリ:16GB以上(大規模なプロジェクトの場合は32GB以上も検討)
- グラフィック:NVIDIA GeForce RTXシリーズやAMD Radeon RXシリーズなど
- ストレージ:SSD推奨。最低でも500GB以上
- OS:Windows 10/11 64bit、macOS 10.13以降、Linux
レンダリングを重視したい場合、CUDAやOptiXをサポートするNVIDIA製GPUがおすすめです。
Mayaに適したスペック
Mayaは映画やアニメーション制作、プロフェッショナル用途でも使われる3DCGソフトです。
多機能であるぶん、動作安定性や大規模データの扱いには高性能なPC環境が重要となります。
パーツ | 推奨スペック |
---|---|
CPU | Intel Core i7以上、またはAMD Ryzen 7以上 |
メモリ | 32GB以上(将来的な拡張も考慮) |
グラボ | NVIDIA QuadroシリーズやGeForce RTX、同等クラスのAMD Radeon |
ストレージ | NVMe SSD 1TB以上 |
OS | Windows 10 64bit、Linux、macOS(IntelまたはApple Silicon) |
プラグインやスクリプトも活用する場合は特にメモリ容量に余裕を持たせると安心です。
Unreal Engineに適したスペック
Unreal Engineはゲーム開発やリアルタイムレンダリングで利用される次世代エンジンです。
高解像度なアセットやリアルタイムの処理が中心となるため、非常に高いハードウェアスペックが求められます。
推奨されるスペックは以下の通りです。
- CPU:8コア以上のハイエンドCPU(Intel Core i9、AMD Ryzen 9など)
- メモリ:32GB以上、できれば64GB推奨
- グラフィックボード:NVIDIA GeForce RTX 3070/3080以上、または同等クラスのAMD GPU
- ストレージ:NVMe SSD 1TB以上(プロジェクトサイズによってはさらに必要)
- OS:Windows 10/11 64bit
リアルタイム描画やVR開発を行う場合、より高スペックなGPUが求められる場合もあります。
プロジェクトの規模や作業内容、将来的な拡張も考えて、余裕のあるマシン選びをおすすめします。
スペック選びで失敗しないためのチェックポイント

3DCG制作を始める際、どのようなスペックのパソコンが必要か迷う方が多いです。
快適に作業するためには、用途や予算だけでなく、将来の拡張性やパーツ同士のバランスも重要なポイントになります。
ここでは、スペック選びで後悔しないための具体的なチェックポイントを解説します。
将来の拡張性
3DCG制作の環境は、ソフトウェアの進化や制作内容の発展に合わせてスペック要求も変わっていきます。
そのため、パソコンを購入する際は、長く使えるように将来的な拡張性を意識して選ぶことが大切です。
例えば、追加のメモリースロットがあるか、ストレージ用の空きベイがあるか、電源は十分な容量があるかなどが確認ポイントです。
拡張性の高い構成にしておくことで、後からパーツを追加・交換しやすくなり、出費も抑えられます。
- メモリスロット数を確認
- ストレージ拡張用ベイの有無
- 電源容量が余裕ある仕様か
- グラフィックボード増設対応か
将来的なアップグレードも視野に入れて、余裕を持った選択を心掛けましょう。
パーツのバランス
3DCG制作では、CPU、メモリ、グラフィックボード(GPU)、ストレージのバランスが重要になってきます。
どれか一つだけ高性能でも、他がボトルネックになると本来のパフォーマンスが発揮できません。
特にGPUは3DCGレンダリングやリアルタイムプレビューで大きな役割を果たしますが、それに見合うだけのCPUや十分なメモリも必要です。
パーツ | 推奨スペック(目安) | バランス重視ポイント |
---|---|---|
CPU | マルチコア(6コア以上) | レンダリング速度と安定性 |
メモリ | 32GB以上推奨 | 同時に多くの作業をこなす場合に重要 |
GPU | VRAM8GB以上 | 大規模なプロジェクトやリアルタイム表示に影響 |
ストレージ | SSD(500GB以上) | 読み書き速度が快適さを左右する |
パーツごとの役割を理解し、全体のバランスを意識することで、快適な3DCG制作環境を実現できます。
用途に合ったスペックの見極め方
3DCGの作業内容によって、必要なスペックは大きく異なります。
モデリングや簡単なアニメーションなら中程度のスペックでも対応できますが、高品質なレンダリングやVR、リアルタイムエンジンを使う場合は上位スペックが必須です。
また、商用利用や大規模なプロジェクトを予定している場合、安定した動作や処理速度を重視する必要があります。
用途別のスペックの選び方としては、以下のポイントが参考になります。
- どのソフトウェアを主に使うか調べる
- ソフトの公式サイトで推奨スペックを確認する
- 制作したい作品の規模感を予想しておく
- 将来的にどんな機能を使いたいか考える
自分がどの段階の3DCG制作を目指しているかによって、必要なスペックをしっかり見極めることが大切です。
おすすめできる3DCG向けパソコン構成例

3DCG制作には、用途や経験に応じた適切なPCスペック選びが重要です。
初心者からプロまで、それぞれの作業スタイルに最適な構成例をご紹介します。
初心者向けの構成
これから3DCGに挑戦する方は、コストに配慮しつつも最低限の快適さが得られる構成が理想的です。
趣味や学習、軽めのモデリングやレンダリング作業を想定しています。
- CPU:Intel Core i5シリーズ または AMD Ryzen 5シリーズ(6コア程度)
- メモリ:16GB
- グラフィックボード:NVIDIA GeForce GTX 1660 SUPER以上
- ストレージ:SSD 500GB以上(できればNVMeタイプ)
- 電源ユニット:500W 80PLUS Bronzeクラス
BlenderやMayaの基本操作、簡単なアニメーション作成もストレスなく行えます。
将来的なパーツ増設も考え、メモリスロットや拡張性にも目を向けましょう。
中級者向けの構成
大型プロジェクトやフォトリアルなレンダリング、複雑なシーン作成もこなしたい方におすすめの構成です。
趣味以上、商業利用未満のユーザー向けといえます。
パーツ | 推奨スペック |
---|---|
CPU | Intel Core i7シリーズ or AMD Ryzen 7シリーズ(8コア程度) |
メモリ | 32GB |
グラフィックボード | NVIDIA GeForce RTX 3060 以上 |
ストレージ | SSD 1TB(NVMe)+ HDD 2TB |
電源ユニット | 650W 80PLUS Goldクラス |
3Dモデリングやレンダリングの高速化、ソフトの同時並行利用にも十分対応可能です。
ストレージは作品データ保存用にHDDも併用すると安心です。
プロ向け・ハイエンド構成
商業案件や大規模なCG映像制作、最新技術を駆使した作業現場で活躍できる最上位の構成です。
より高い作業効率や、数百万ポリゴン規模の大規模シーン編集にも難なく対応します。
- CPU:Intel Core i9シリーズ または AMD Ryzen 9シリーズ(12コア以上)
- メモリ:64GB以上
- グラフィックボード:NVIDIA RTX 4090 などワークステーション向けモデル
- ストレージ:SSD 2TB以上(NVMe)+ 大容量HDD(4TB以上)
- 電源ユニット:850W 80PLUS Platinumクラス
- 冷却システム:高性能空冷または水冷クーラー推奨
プロ仕様のレンダーファームや複数台体制も考えられるスペックです。
実写合成やVFX、VR/AR開発など最新の3DCG業務にも対応できます。
3DCG制作に最適なスペック選びのための考え方

これまで3DCG制作に必要な各パーツやスペックについてご紹介してきましたが、最終的に自分にとって最適な構成を決めることが重要です。
自分の制作スタイルや作業環境、予算に合わせてバランスの良いスペック選びを心がけてください。
どのパーツもハイスペックであれば理想的ですが、まずはグラフィックボードやメモリなど、作業効率に大きく影響する部分を優先的にグレードアップするのが現実的です。
また、最新モデルがすべての制作に最適というわけではないので、必要十分なスペックを見極めて選択することも大切です。
今後ソフトウェアやワークフローの進化に合わせて、スペックの見直しやパーツの追加・交換も考慮しておくと長く快適に3DCG制作を楽しめます。
自分に合ったスペックを選ぶことで、より理想的な作業環境と表現力を手にすることができるでしょう。